“労働者”ではなく、“仕事を作りだす人”になること。「IDENTITY名古屋」共同代表の本音にインターン生が迫る

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私にできることって、何だろう。

1年前にインターンを始めた私は「IDENTITY名古屋」を卒業する日が近づくにつれ、それまでに自分がここに残せるものは何かと考えるようになった。

色んなアイデアが浮かんでは消えていくなか、ひとつのシンプルな思いに辿りつく。それは、もっと多くの学生に「IDENTITY名古屋」について知ってもらい、仲間になってもらうことだった。

そのために自分にできることは?

考えるやいなや、ペンを持っていた手が動いた。「IDENTITY」共同代表の碇和生とモリジュンヤの対談記事の構成を真っ白な紙に書き出していた。

どんな思いで会社を立ち上げ、ここまでやってきたのか。事業を支えるインターン生について思うこと。これからの目標や、その実現に向けてどんな人材を求めているのかなど……。

「IDENTITY名古屋」の軌跡を文章という形で多くの人に届けるため。そして、インターン生である私自身あまり知ることのなかった代表たちの本音に歩み寄るため。

真っ白な紙からスタートしたひとつのアイデアを、形にしようと思う。

PROFILE

碇和生
共同代表取締役
大手金融機関などへのWEBマーケティングのコンサルティングに従事。その後、非営利事業やスタートアップの創業を経て、複数のスタートアップで資金調達/マーケティング/新規事業立案のアドバイスを行う。

モリジュンヤ
共同代表取締役
編集デザインファーム「INQUIRE」代表。『THE BRIDGE』、『マチノコト』等に共同編集として運営に携わる他、ビジネス系、IT系を中心に媒体多数に寄稿。複数のメディアの立ち上げに携わり、コンセプトワークからコンテンツ設計、運営体制の構築まで含めたメディアデザインを行う。

「IDENTITY名古屋」を立ち上げたようと思ったきっかけ

最初の質問は、代表である碇とモリの出会いについて。机を挟んで向かいあう2人は、お互いの目を見ながら、少しずつ昔の記憶を手繰り寄せようとしていた。

ーー2人の最初の出会いって、どんな感じでしたか?

モリジュンヤ(以下 モリ):当時、碇はまだサラリーマンだったよね。

碇和生(以下 碇):そうだね。ジュンヤは 「greenz.jp(※1)」っていうメディアの副編集長をやってた。

モリ:渋谷のカフェで、碇が手がけてた「シブカサ(※2)」っていう事業の相談にのってた気がする。

ーーお互いの第一印象は?

碇・モリ:覚えてない。(笑)

:8年くらい前のことだし、カフェで会ったのも2人だけじゃなくて他にも何人かいたからね。

モリ:そのときは、まさか2人でメディアを立ち上げることになるとは予想もしてなかった。仲良くなり始めたのはコワーキングスペース「co-ba(※3)」に入ってからかな?

:そうだね。僕が東京から名古屋に移住する少し前に、サシで会うようになった。

ーー移住した後、なぜメディアを立ち上げることになったんですか?

:移住したばかりの頃、名古屋のことを知りたいと思ってもネット上に情報が少なかったんだよね。そこで、岐阜出身でもあり、名古屋駅近くの予備校に通ってたジュンヤに相談することになって。

モリ:そうそう。当時(2015年)は、スマホネイティブでSEOを駆使したメディアの運営が東京では当たり前だったけど、名古屋にはまだなかった。だから、僕たちが名古屋で新しいメディアを立ち上げればいいのでは?って話してたんだよね。

:うん。移住したての頃で、名古屋には何の思い入れもなかったけど。(笑)

ーーそのモチベーションから、メディアを立ち上げるのは大変だったのでは?

:僕はフットワークが軽い人間だったから、そうでもなかったかな。サイトは自分が作れるし、記事のコンテンツはジュンヤが、唯一の難題だったサイトのロゴも知り合いのデザイナーが力を貸してくれたからスムーズに決められた。

モリ:だから、初期費用実質0円なんだよね。もともとあったスキルをかけあわせて、パッと立ち上げた。記事の執筆も、最初は碇と僕と妻の3人でやってたけど、1週間くらいでライターも何人かジョインしてくれたから、1ヶ月もしたら僕と碇の手から離れた感じだったかな。

:そうだね。そのあとは、ジュンヤが名古屋や岡崎で開講してたライタースクールの生徒が「IDENTITY名古屋」に興味を持ってくれたり。仲間も少しずつ集まってくれるようになった。

ーーでは、メディアの立ち上げにあまり苦労はしなかったと?

碇・モリ:苦労してないね。(笑)

:最初は、メディアの数字が伸びないことも覚悟してたから、落ち込むこともなかったかな。1年で30万PVという目標も、少し後ろ倒しではあるけど1年半くらいで達成できたし。メディアを始めたことで、地域の企業や人との繋がりもできたから、メディアを立ち上げたことに対する後悔もなかったね。

ーーもっと苦労されてたのかと思ってました。意外です。

モリ:僕たちは苦労してなかったけど、記事の編集者とか周りの仲間は大変そうだった。(笑)

:確かに!初期のメンバーがいなかったら、今の「IDENTITY名古屋」はなかったね

立ち上げから3年。これまでの成果、そしてこれからのこと

ーー周りに支えられつつ、メディアがスタートしてから3年弱。これまでの手応えは何か感じますか?

:ようやく、「IDENTITY名古屋」としての売上が入り始めたのが大きいかな。

モリ:碇個人のコンサル依頼は来てたけど、「IDENTITY名古屋」への記事広告の発注とか、メディアとしての売上が立ち始めたのは今年に入ってからだよね。

:そうそう。とはいえ、まだ全然安心できない。これから、もっと頑張っていかないと。

ーー具体的にどう頑張っていこうかというビジョンはありますか?

:名古屋もそうだけど、東京以外の地方はまだまだデータとして可視化されてないんだよね。例えば「IDENTITY名古屋」では、今年の夏にナイトプールの記事がバズったけど、「じゃあ何でナイトプールの記事がよく読まれたんだろう」っていうのをしっかり分析して、データ化するのが大切だと思っていて。

そうすることで、名古屋という街が今何を求めているのか、何に興味があるのかというニーズが把握できるようになる。今は、東京バイアスのかかった全国統計のデータしかなくて、ローカルのニーズがほとんど顕在化されてない。

モリ:ニーズをちゃんと数字としてとれるのは大きいよね。自分がいる場所の半径500m、1kmのエリアに何があるのかっていう情報って東京ではマシだけど、地方だとほとんどアーカイブできてない。その状態だと、既存のインターネットサービスでできることが限られてきてしまう。

そこで、一次情報的に「こんなお店ができた」というネタを拾って記事化することで、コンテンツに対するユーザーの反応が集まり、ユーザーのニーズを可視化することができるからね。

:まさにその通り。何となくこれが流行ってるから、あれがイケてそうだからっていうフレームではなくて、きちんとデータからトレンドを追いかけてサービスやモノを作っていく動きを「IDENTITY名古屋」発信で地方に広めていきたいかな。

インターンに対する、2人の本音

インタビューも終盤に差し掛かろうかという頃。私は、自分自身が気になっていた「インターン」に対する本音について切り込むことにした。

ーー「可視化されていない地方のニーズを見える形にしていく」ためには、これまでも「IDENTITY名古屋」で積極的に動き続けて来たインターン生の力も大切になってくると思うのですが、これまでのインターン生の働きについてはどう感じていますか?

:インターンとして働いてくれている学生の力は大きいね。

もともと「IDENTITY名古屋」は、フリーランスの集合体のようなもので、個人の特技をかけあわせた結果できたものだから、インターンに対しても「学生」として見るんじゃなくて、それぞれの特技を持った「個人」として見るようにしてる。

これまでのインターン生は、大きな仕事でも一度ふればちゃんとこなしてくれるから本当に助かってるよ。

モリ:今年に入って、「Tity(※4)」のようにインターン生だけでプロジェクトが立ち上がるようになったのは、すごい良いことだよね。

ーー客観的にみて、これまでのインターン生の共通点はありますか?

:んー、言い方は難しいけど「ちょっと変な人」かな。(笑)どこか普通の学生とは違うルートを歩んできた人。例えば中川(筆者)みたいにスロバキアに1年間留学していたとか、「普通に学生生活を送っていたら、まずそんな体験しないよね」っていう経験をしている人を基本的には採用してきたかな。

というのも、一芸で採用してきた学生のほうが結果的に優秀だったケースが多かったんだよね。

ーーなるほど。確かに、一芸がある学生って周りと比べて好奇心が強かったり、フットワークの軽い人が多いと思うので、「IDENTIYT名古屋」でのインターンが肌に合ってるのかもしれませんね。

モリ:逆に、多くのことを同時にやりすぎている人は採らないよね。大人でも、いくつかのタスクを同時にこなせる人って多くないと思っていて、学生だとなおさら。そうなると、やっぱり1つの仕事や物事にちゃんとコミットできる学生が一番だと思う。

スマホでアプリケーションを同時にいくつも起動してると、スマホの動きが重くなるのと一緒。一つのことに集中していれば、学生だって自然と力がついていくものだしね。

ーー「一つのことを極めれば、自然と色んな力が身につく」っていうのはすごく共感します。「IDENTITY名古屋」でインターンをすると、具体的にどんな力が身につくでしょうか?

:なんだろう・・・。毎月5本ペースで記事を書いてもらうことにはなるから、文章力は最低限つくよね。

モリ:それはもちろんあるね。あとは、「メディア運営の総合力」かな。

ーーと、言いますと?

モリ:自分が記事にしたいと思うネタやテーマを見つけ、関連情報を集める。それを発信するために整理し直して、実際にコンテンツを作っていく。

情報を集めるときには取材に行くこともあるから、そこで対面コミュニケーションの能力も養われるだろうし、コンテンツを作ったあとのリアクションへの対応をすることで基礎的なマーケティング力も身につけられる。新卒1,2年目のスキルを体得できる土壌は整ってるよね。

:それとビジネスにまつわるお金の感覚もつかめるようになると思う。「IDENTITY名古屋」では、「今回の案件は○円の売り上げがたった」とか「この案件を担当する人は○円支払います」っていう話を躊躇なくインターン生の前でする。もちろん業績数値の共有もするし、なんなら自分の損益の話だってする。(笑)

ーー確かに、言われてみれば「IDENTITY名古屋」でインターンを始めてからお金について考える機会が増えた気がします。広告にかかる費用に関しては特に。

:他の会社だと、インターン生に対して大っぴらにお金の情報を開示するところって多くないんじゃないかな。「聞かれれば、答える」っていう会社のほうがスタンダードな気がする。そう考えると、「IDENTITY名古屋」はお金にまつわる情報開示はしっかりしてる。

モリ:ビジネスにまつわるお金の感覚って、本当に大事だよね。お金関連で話を続けると、「IDENTITY名古屋」では基本的に成果報酬型だから「働く」ということの真意が分かると思う。

ーー「働く」ことの本当の意味、ですか。

モリ:よく、会社員だけの経験を長く続けていると「自分が何かをやれば、何かしらの給与が入る」っていうマインドに陥りがちなんだけど、そもそもこの考え方自体間違っていて。「自分が何かをやって、そこに価値が生まれて始めて報酬がもらえる」という考えが、本当は正しいんだよね。

前者は単なる“労働者”だけど、後者は“仕事を作り出す人”。

「IDENTITY名古屋」は、さっきも言ったように成果報酬ベースだから、基本的に自分で仕事を作りだして、それに対してちゃんと結果が現れなければお金はもらえない。だから、ここでインターンをすると「働く」ことが本来どういうことなのか、体感することが出来るはず。

ーーなるほど。逆に言えば、「自分のやりたいことを形にしたい人」や「自ら仕事を作り出したい人」が「IDENTITY名古屋」でインターンをするのに向いてるということでしょうか。

:そうだね。0から事業が立ち上がるのを見たいひとにはすごく価値のある経験になるんじゃないかな。

モリ:言われたことだけをやり続けるのと、どんなに小さな事業でも自分で0から作っていくのとでは、身につく力が全然違うしね。

:あと、先の話でもでてきたように「IDENTITY名古屋」の主たる目的は「ローカルの声になっていない思いやニーズを可視化すること」なので、「地域活性化」や「地域で何かアクションを起こしたい」っていう学生も、ぜひ仲間に入ってほしいな。

ーーインタビューを通して、2人の本音を知れた気がします。今日は、本当にありがとうございました!

インタビューを終えたあと、帰りの電車にひとり揺られながら2人が語っていた言葉を反芻する。

“労働者をするか、仕事を作り出す人になるか”

今回、この記事を書こうと考えたのは、誰かに指示されたわけでも、強制されたわけでもない。「IDENTITY名古屋」という存在をもっと多くの人に知ってもらいたい。その存在をもっと盛り上げてくれる仲間が増えてほしい。そんな気持ちを、私がどうしても形にしたかったからだ。

“好き”を”好き”で終わらせない。

そんな考え方が、いつのまにか自分の中に根付いていた。

この記事を読んでいるあなたにも、好きと思えること、やりたいと思うことがきっとあると思う。

「名古屋が好き」
「自分の言葉で何かを伝えたい」
「人と関わることがしたい」

どんなに大きなことでも、小さなことでも構わない。その”好き”を、”やりたい”を、「IDENTITY名古屋」で目に見える形にしてみないだろうか。

ここがもう、その0地点だと思うから。

「IDENTITY名古屋」について、もっと話を聞きに行きたい

[編集部注]

※1:「greenz.jp」は、「一人ひとりが『ほしい未来』をつくる、持続可能な社会」をめざすNPO法人グリーンズが運営しているウェブマガジン。これまでに5,000以上の「ほしい未来をつくる」人、組織、考え方などを紹介している。

※2:「シブカサ」は、まだまだ使えるのに処分されてしまうビニール傘たちを企業や店舗、個人の方から寄付してもらい、ちょっとオシャレにデザインして、再び渋谷の街に無料レンタル傘として貸し出すプロジェクト。

※3:「co-ba(コーバ)」は、株式会社ツクルバが設計・運営をしている、渋谷の会員制シェアードワークプレイス。若手起業家やクリエイター、スタートアップのチームが集い、新しいビジネスを生み出す場所としても機能している。

※4:名古屋地域特化型のインフルエンサーを活用したPRサービス「Tity」(2017年10月リリース)は、「IDENTITY名古屋」のインターン生によって立ち上げられた事業。コミュ二ティには2017年11月時点で60名以上が在籍し、ファッションリーダーからフリーモデルまで、多種多様なメンバーが、情報を発信したい企業のPRをサポートしている。

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